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2014/07/11

Emergency Roll






パトリックはイタリア系アメリカ人のケミカル・ボーイで、パッチってあだ名で呼ばれてた。

パッチはドゥルーに連れられて、僕らと遊ぶようになったが、

最初の頃、日本人が、と言うよりも、アジア人が嫌いだったんだと思う。

ものスゲー心の壁があって、まともに目も合わしてこなかった。



ところがある時、僕がスーパーで買ってきたスシを食っていると、

パッチが、「あれ?それって、スーシー?」 と言わんばかりの顔で興味を示したのである。

僕が、「お前、スシ・バージンか? 食ってみーや、」 と勧めると、パッチは遠慮なく3つも食って、

「ナンバーワン!」 と言って初めて笑顔を見せた。ナンバーワンはパッチの口癖だった。

その後、ナンバーワンは、日本語でイチバンだぜ、って教えたら、「イチョバン!」と言うようになった。








Limp Bizkit - Rollin'



パッチはカラオケも大好きだったんだけど、半端ない音痴だった。

リンプのローリングをよく選曲してたんだけど、勿論マイクを持ったら立ち上がり、

ローレ、ローレ、ローレ、ローレ、ロー、キープ!

ローレ、ローレ、ローレ、ローレ、ロー、キープ!

って腰の後ろに手を当てて、ノリノリで歌うんだけど、、あまりの下手さにみんな大爆笑だった。

今でも僕は、この曲を聴くとパッチを思い出して可笑しくなる。






パッチとリッパ


あの日は、僕は仕事が休みで、珍しく我が家には誰も居なかったから、

一人っ子育ちの僕は、エッチなDVDを観ながら1人の時間を満喫していたんだ。

そしたら、誰かが走ってくる足音がして、ドアをガンガン叩きやがった。

僕はウンザリしながら鍵を開けると、

パッチがバカボンに出て来る本官さんみたいにドタバタと部屋に入ってきた。




ラウラと、パッチと、ロリーナ


部屋に入って来たパッチはキョロキョロしながら、息を少し整えて言葉を発した。


パッチ 「ヤバイ、ヤバイよ、どーしよー!?ワカサ・パークの辺りをプラプラ歩いてたんだ」

僕 「それで、」

パッチ 「そしたら、日本の警察官に呼び止められた」

僕 「ほー、それから?」

パッチ 「おれは、おもクソ ぶん殴って走って逃げてきた」

僕 「パッチ、今すぐ我が家から帰れよ、」

パッチ 「ヤバイよ、ヤバイよ、」


僕 「何で殴ったの?」

パッチ 「わかんない?」

僕 「何か変なもん持ってた?」

パッチ 「スシを持ってたけど、投げ捨てたよ」

僕 「・・その必要なかったと思うな」

パッチ 「俺もそう思うよ」

僕 「OK,今すぐ我が家から出てけよ」

パッチ 「ヤバイよ、ヤバイよ、」


面白い奴だったな。そしてとても迷惑な奴だったな。




ダイチ、ナッツ、パッチ、僕、ジェフ


琉球彫よしさんの、ザ・無料タトゥー・イベントって分かりやすい名前の催し物に行ったんだ。

沖縄市の空港通りにある 彫よしさんの店にも遊びに行ったけど、面白い人だったな。






ダイチは沖縄人で、東京で詐欺の仕事の出稼ぎに行って帰ってきたばかりだった。

総合格闘技の大会で8位になったって微妙な肩書きもあった。

沖縄の男は情熱的で、夜に目が合うと高確率でケンカになった。

まー、弱そーな奴でも全力で絡んでくるから、もー僕は涙目になっちゃうんだけど、

ダイチの返り討ち率は100%で、大抵が蹴り一発だった。


でも、入れたての肩のワンポイントタトゥーが嬉しくて、しょっちゅう袖を捲ってる様な、

天然ボケで、愛嬌があって、心優しくて、かわいい奴だったな。

そいで、キャバクラの年上のお姉さんに叶わぬ恋をして、

「林さん、今日、俺、バラの花束持って、店の前で待ち伏せしてよーかと思うんです。」

とか言うから、「ダイチ君。そりゃ君、キモいぜ。」って教えてあげたんだ。






手前に座ってるマルコメ頭のジェフリー・ブラマーは、

友達の中でケンカ最強だったが、メンタルは最弱だった。

ジェフが時々、じゃれ付いてきたりするんだけど、一々痛いので、

「おい、痛いんだよ、ボケ!」と怒った顔をすると、

「ウップス、ソーリー、ゴメンネ、ゴメンナサイ、」

と、半日に亘って耳元へ謝罪に来た。



この後、写真の隣に座っているレイナと破局して、傷心し、

僕らの前に姿を見せなくなった3ヵ月後、

ドラゴンのタトゥーの入った手に数珠を巻き、

「ブッダ、イチバーン」

とか言って、創価学会に入会して現れた時は本当にウケた。






写真の真ん中の2人が、ヤスとタカだったかな?

この2人とも、松山のクガニ屋って居酒屋で友達になった。

クガニ屋は今はもう無いみたいだ。



狭い沖縄のなかでも、地域ごとの特色なんかがあるらしくて、

南部の奴らはヤバいと時々耳にした。

タカとヤスは南部の糸満の奴らで、初めて会った時、

「実は俺たち、傷害事件が何件かで指名手配中なんですよ、うへへ」

とか言ってた。「ホントか?」 なんて思ってたら、

その3時間後にはクガニ屋の店内で大乱闘が始まった。






事の発端は、ウソの様な本当の話なんだけど、

写真の真ん中に写っている、タカとヤスの子分その①みたいな奴で、

ジゲルって名前だったと思う。


シゲルが、何かを注意してきた店員に絡みだしたのである。

当然、冷静な僕らは、「まぁまぁ、」とか言いながら、様子を見ていた。

シゲルはバカだから、ボキャブラリーが少なくて、すぐに言葉に詰まり、

悔しそうに「おらぁ!」とか言いながら手が出た。

見るからにスローで大振りなパンチを、店員はサッと後ろに避けた。

シゲルのこぶしは勢いを増して、向かい側に座っていたヤスの頬に

ベチンと音を立てて当たった。本当に。本当に。




この真ん中がヤス


僕は、「うそーん」と、口に出し、ヤスは「フッ、」 と言って笑った。

少し間を置いて、ヤスは立ち上がり、「避けんなコラ!」 と言って店員を殴り、

振り返って、シゲルを殴った。

殴られたシゲルは、「す、すんません!すんませんでした!すんません!」と3回叫んで、

出口に向かって走り、そのまま全速力で逃げていった。

コントみたいだった。


それで、怒りの矛先を無くしたヤスが無差別に暴れだし、大盛り上がりの乱闘になった。

ここまでは、ファンキーな友達を持つ人ならば、時々ある話だと思う。

こいつらのヤバい所は、乱闘のピークあたりで、ヤスが空き瓶で友達のタカの頭を殴ってるとこである。

そして、殴られたタカが、フラ付きながら振り向いて、ヤスの顔をみて、ニヤリとした辺りである。






その後、ヤスが店の外に出て、プロパンガスの小さいボンベをぶん投げて、

ボンベがガャシャンガャシャン、火花を散らしながら、転がってるのを見ながら、

僕は、「ダメだ、ついてけねー」 と思って戦線離脱した。


それから少しして、地回りの893が来て、やっと騒ぎは収まった。






僕らは何故だか彼らに好かれたらしくて、2人は何度か我が家に遊びに来ていた。

この日は、ドゥルーが、男同士、裸になって語り合おうなんつって

全員の服を脱がしたんだけど、みんな妙な感じになって、あんましゃべんねーの。


きっとあの2人に堅気の人生は無理だろうな、せめて刑務所の中で無い事を祈っているよ。


それにしても、この写真のドゥルーピーのドヤ顔、なんかムカつくよね。

この人だけ、やたら満足そーだったもんな。



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