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2014/09/17

Anything Which there is between a Dream and Reality











Alysha Brilla - Moody's Mood For Love






HORIZARU TATTOO at 田端




ヌエのバックピース by 彫猿




タヌキとキツネとコウモリのスリーブ by 彫猿




カニのバックピース by GENKO




渋谷と肩こり除けのサロンパス








ある朝、蛇口をひねると水が出なかった。

何故だろうかと立ち尽くしていると、人間大の魚に男の手足がはえた奴が椅子に腰掛け、

世界中の水が枯れたんだ。と、ごく落ち着いた口調で言った。

僕はそいつの姿に一瞬ギョッとするんだけど、

その魚の奴が慌てる事もなく、悲しむ様子もないので、

もしかしたら波乱の人生を生きて変わり果てた旧くからの友達なのかもしれないと思う事にした。



僕は外の様子が気になって、出かけることにした。

魚の奴も誘ったが、奴は顔を向こうに向け、手を左右に振って部屋に残った。



奴は多分、鯉だった。



外はどこも、歩行者天国の様に人で溢れていた。

少しすると、人々が同じ方向へと流れだした。

誰かが、海だ!と叫んでいた。僕も同じ方向へと歩いた。



直ぐに海に着いたが、当然枯れていて、見渡す限り荒れ地であった。



砂浜には家ほど大きい宇宙船の様な形の物があった。

僕の隣の奇形の男が、あれは鳥取県で開発されたハイテクな地底船で、

先端についているドリルで地中に潜れる、とても珍しい物だと教えてくれた。



地底船の前の壇に、ローマ法王の衣装を着た、小太りな男が立った。

そして、法王はコメディアンの様な口調で、

水を取り戻すには生け贄が必要だと拳を振り上げ、

若い女が壇上に上げられ、どわーっと歓声があがった。

生け贄の女が、嬉しそうに、そして恥ずかしそうにマイクを持って、

「みんなCD買ってくれたぁ?」 というと、

集まった人々は一斉に両手に紙袋を持って踊りだした。


みんなが踊っている間も法王は演説を続けた。

「生け贄を汚ないまま差し出す訳にはいかない、

美輪明宏の予知ではまだ地底には僅かな水が残っている。

それを今からこの地底船で採取して、生け贄の女を風呂に入れるのだ。」



浜辺には太陽が照り、誰もが汗をかいていた。人々の踊りは続いた。



僕と奇形の男は踊らずにぼーっと立っていた。

奇形は、「ふん、バカバカしい。美輪は偽物だよ。

それよりこの騒ぎに乗じて地底船に忍び込もう」 と、僕の顔を覗き込んで言った。

僕らは地底船に向かった。



地底船に近づくと、壇上に浮浪者が駆け上がった。

垢だらけの浮浪者は生け贄を若い女にするのは可哀想だと言い、自分が変わると言った。

インチキ法王は、「お前ではダメだ価値も意味も無い」 と言い、

押し問答の末、浮浪者はインチキ法王をレンガで殴って殺した。



押し問答の最中に、浮浪者の耳の穴から、小さく折りたたまれた紙切れが地に落ちた。

地底船の近くまで来ていた僕はそれを拾って読んだ。

彼が、世俗の喜びも、人道も愛もしらず、人生を芸術にささげ、

無一文になってもなお、芸術への熱い渇きと、少しの両親への懺悔が綴られていた。


僕がその汚い紙から顔を上げると、奇形の男は消えていた。

浜辺の人々は壇上の生け贄と浮浪者にならって、口を閉じ、両手を大きく「Y」の字に広げて空を見上げていた。



残暑の日、そんな夢をみたよ。











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