UNICORN ft. 坂上二郎 - デーゲーム
僕は、ゴミ収集場の前を通る時、必ずゴミに目が行ってしまう。
一般的には知られていない法律だが、捨てられたゴミを拾う事は犯罪らしい。
カメラとか、ダッチワイフとか、思い出とか、お婆ちゃんとか、あらゆる物はゴミに成り得る訳で、
世の中には、トラックでゴミを拾ってリサイクル品として売って、ご飯を食べている人もいるんだよ。
ゴミ屋敷みたいな家が、何故、出来るのかは理解できないけどね。
好きが高じてって事では無いが、僕は20歳頃の夏、ゴミ収集屋でバイトをした事がある。
社員のおっさんや、じいさん達は、揃いも揃って器の大きい人達で、
例えば、ゴミ袋の中に未開封のポッキーの箱を見つけると、
まるで、道端で拾った10円玉をポケットに入れる様な気軽さで
「ラッキー♪」と言って口に入れ、僕にも「お一ついかが?」と勧めるのである。
あの日々は、カルチャーショックの連続であった。
ゴミ屋はどこでも人気者であった。特に生ゴミがね。
小学生達は鼻をつまみ、男達は顔をしかめ、おばちゃん達はうめき声を、
「うわっ、ゴミが来たよ、超くっせー!!」
と、駅の近くでは女子高生たちが黄色い声で声援をくれた。
生ゴミはトラックの中でいっぱいになると、圧縮されて、ぴゅーぴぃーと音をたて、
風船ゲームの様に膨らんで、爆弾のように破裂する。
何人もの仲間が被爆した。命が幾つあっても足りなかった。
炎天下、生ゴミを追いかけて走り続けると、
臭いと、汗と、恥と、高く青い空と、夏の雲とで、
時々、不思議な世界にトリップする事があった。
少しづつ気が遠くなって行き、今、自分が一体、何をしているのか分からなくなったりした。
ふと我に帰ると、まるで甲子園を目指していた高校球児の夏が終わった様な
ノスタルジックな気分になっちゃうのである。
多分、あの日々は、今の僕を形成する上で重要な経験であったのと同時に、
例えば青春とか、成功とか、王道とか、普遍的な愛とか、
あの意識の曖昧な生ゴミ・トリップの最中に、
そー言う決定的な何かを失って、既に敗北してしまっていたのかもしれないね♪