Yashamaru
「旅行に行く間、」と
職場の人から頼まれて、
犬を預かったのだ。
僕は以前にも友達のポメラニアンみたいな奴と
何日か過ごした事があったので
余裕しゃくしゃくでYesと答えた。
Remi Wolf - Sexy Villain
うん。ジャンキー顔だな。
ガリガリだし、
時々震える。
傍らにヘロインを打った注射器が転がっていても
なんら違和感が無い。
子供の頃は親に虐待を受けていたかの様な
無気力ぶりだ。
と言うよりも置物レベルだ。
嬉しいとオシッコしちゃうって聞いてたけど、
生まれてこのかた笑った事は一度もありません
って印象だ。
それとも何か、
大好きだったご主人に売り飛ばされたと思い、
目の前に奴隷商人の野卑な男がいる事に
ただただ絶望しているのだろうか?
違った。
ただ腹が減っていただけの様だ。
まるでサメが捕食する時の如くに
目が後ろに向く程に
それは凄い勢いで飯を食った。
盛り上がってきた。
それは一瞬の出来事であった。
むむ、流石にバジリスク
伊賀の夜叉丸からその名を授かった犬
なんだ!なんだ!!!
散々、僕に散歩さして、
飯の支度をさせ、
床の準備までさせておき、
油断させたところで騙し討つ
ついに幻術を繰り出して攻撃してくるつもりだな!?
そうして首輪を自ら外すと、
僕が彼に与えた布団を足で一生懸命かき集めて山を作った。
なんと、そうしてフカフカ度を高めて
上質な眠りを企てるとは、
賢い奴よの、
と思ったのも後の祭り
夜叉丸殿はご乱心なされた。
その後、目の前でこんなに眠たそうにするから
いつもより早くに消灯したんだ。
そしたら夜中の4時に顔をバシバシ殴って起こされて、
玄関に向かって吠えて、
夜叉丸君は
部屋中をオシッコしながら走り回った。
何が嬉しいんだ?
いや、ただ生きるとは
本来こんなにも嬉しいものなのかもしれない。
そして、なんだか
君の事、誤解しててごめんね。